HAVE:所有概念


1. 所有概念 (1): [所有者] + HAVE + [所有物]

Haveのコア概念は「所有」であり、"[所有者] + HAVE + [所有物]"の構造で様々な所有概念を表現することができる。まずは最も具体的なところから、「所有」の概念が徐々にメタファー的拡張を通して広がっていく様子を研究していこう。

31. 彼は両手でお盆(トレー)を持っていた。
→ He had a tray in his hands.

have: 古英語 habban「つかむ・手に持つ」が原義。ここから「所有」や「経験」へと意味を拡張させてきた。

32. 彼女は新聞を脇に抱えていた。
→ She had a newspaper under her arm.

日本語では、持ち方によって「抱える」や「背負う」などと動詞を使い分けるが、英語の haveは日本語の「持つ」よりも広い意味をカバーする。持ち方は「場所」情報として副詞句で表せば良い。

33. Timは iPhone 7を持っている。
→ Tim has an iPhone 7.

物の所有:最も典型的な所有関係。

34. Victoriaには4人の子供がいる。
→ Victoria has four children.

日本語では、34のような親族や人間関係は場所+存在概念を拡張して表現されることが多い(「Victoria(のところ)には4人の子供がいる」・「Alfredoには彼女がいる」)ため、所有概念を用いる英語の発想に習熟する必要がある。

35. Alfredoには彼女がいるが、姉妹はいない。 
→ Alfredo has a girlfriend, but no sisters. 

but no sisters: 後半は "Alfredo has no sisters."から重複部分を省略。 

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2. 所有概念(2): 抽象的な「所有」

前回に引き続き、HAVEのコア概念である「所有」の広がりを検討していく。

36. 今朝はトーストとコーヒーの朝食をとった。
→ I had toast and coffee for breakfast this morning.

eat/drinkの婉曲表現「食物を自分の中に取り込む」というイメージ。例えば eatであれば "to put food in your mouth and chew and swallow it" (LDOCE5)というように、動物と共通の直接的な「食べる」ニュアンスが強く出てしまう。よって「おひとつどうぞ」と勧める時にも " Have one."が適当で "Eat one."は不適。

37. 彼には素晴らしいアイディア(複数)がある。
→ He has brilliant ideas.

抽象的な「所有」ある状態 (37では「アイディアがある」という状態)具体化・物象化し、所有概念の拡張として表現する。日本語では「場所+存在概念:〜がある」で表されているという違いにも注目。

38. 週に何時間英語の授業がありますか?
→ How many English lessons do you have {in a week / each week}?

ある一定の特徴を持った時間 (38では English lesson)を「物」として捉え、所有概念で表現する。 

39. 今日は楽しい1日だった。
→ I've had a good time today.

経験:38と同様、一定の時間を物象化することで、経験を「物の所有」になぞらえて認識・表現している。時制 (現在完了形)のポイントとしては、現在を基準に「楽しい1日だったという経験を今持っている」というところにある。(詳しくは時制のトピックで扱う。)

40. ここまでのところで何か質問はありますか? 
→ Do you have any questions so far?

37の idea(s)と同様、question(s)も脳内に「所有」するものとして扱われている。英語において、これらが所有概念: haveを用いて表されることは共通理解の上にあるため、「何か {質問 / アイディア}は (ありますか)?」と問いかける際には、"Do you have"部分を省略して "Any {questions/ideas}?"とだけ言っても事足りる。

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3. 所有概念の拡張 → 表現のバリエーション

Be動詞の記事で、"A is B"を基本構造として動詞を入れ替えることで様々な「あり方」をより細かく表現する要領を学んだ。"A has B"でも同様に、所有概念を基盤とした表現のバリエーションを作り出すことができる。

41. 彼女は猫(1匹)を飼っている。
→ She keeps a cat.

keep: 古英語の cēpan「観察する・注意を払う・つかみ取る」が語源。よって have a catよりも keep a catの方が「ペットとして世話をする」というニュアンスが強く出る。

42. Roseは面接への案内(招待)状を受け取った。
→ Rose received an invitation for an interview.

receive: HAVEの表す「所有空間」の中に、他者から与えられた・送られたものを認めて取り込むイメージ。

43. もう新しい仕事は決まった?
→ Have you got a new job yet?

get: 「所有空間」の外側にある対象を、努力して (意識を向けて)手に入れるイメージ。 Haveが「所有している」という結果状態にのみ焦点を当てているのに対し、getは所有に至るプロセス (変化)により注目している。

44. 彼はポケットからその部屋の鍵を取り出した。
→ He took the key {for / to} the room {out of / from} his pocket.

take: 古ノルド語 taka「つかみ取る」が語源。とりわけ、考えて・選択的に「所有空間に取り込む」ニュアンスが強い。

45. A: どうしたの?ー B: 財布をなくしたんだ。
→ A: What's the matter with you? ー B: I've lost my wallet.

lose: 所有概念を基盤に、「もともと所有空間にあったものを失う」ことを表す。45の対話においては、現在完了形 (have lost)によって「失った状態を現在所有している=今も財布がなくて困っている状況」であることが示されていることにも注意。

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4. 所有概念の拡張(2) → getの用法

43で触れたように、get所有に至るプロセス (変化)により注目した動詞である。Haveが具体物の所有から抽象的な状態の「所有」へとメタファー的拡張を通して展開していったのと同様、 getも具体→抽象(ある「状態」への変化)へと広がっていく。

46. 今朝 Lucyから手紙をもらった。
→ I {got / received} a letter from Lucy this morning.

最も具体的な所有に至るプロセス (変化)を表す文の例。HAVEの表す所有空間の外側にあったものを手に入れる・取り込むイメージ。

47. ひどい風邪をひいた。
→ I've {got / caught} a bad cold.

「所有空間」の外側にあった状態(風邪)を自らの中に取り込んでしまったようなイメージ。現在完了形によって、状態変化に伴う結果状態を基準時である現在に「持っている」ことを表す。

48. 着いたら駅に迎えにきてくれますか?
→ Can you come and get me from the station when I arrive?

(come and) get 人 from 場所: 「人を(場所)から連れてくる/行く」→使役移動概念とも関わるが、[人]を所有空間の中に取り込んで移動させるイメージ。

49. その冗談 (joke)がわからなかった。
→ I didn't get the joke.

ここの getは understandの意。 The jokeを具体化・物象化して捉え、脳内という「所有空間」に取り込む対象として表現している。

50. 歳をとると記憶が衰えていく。
→ As you get old, your memory gets worse.

get + 形容詞: 形容詞によって表される「状態」に至る変化を表す。55の youは聞き手(あなた)ではなく、世間一般の人を指している。

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5. 所有概念の拡張 (3) → keep, take, lose

51. お釣りはいりません(取っておいてください)。
→ Keep the change.

タクシー(など)の運転手にチップを渡すための手段としても使える。また英語では、相手にプラスとなることは、いわゆる「命令文」でさらりと言えば事足りるという点にも注目。

52. 静かにしていてください。
→ Please keep quiet.

Quietという状態を聞き手の「所有空間」の中に保つ(=その状態でいる)ことを要請する言い方。
「静かに」と言うとき、 quietは loudの反対語で「音や動きを(あまり)伴わず、邪魔が入らない雰囲気」を表す。一方で silent「声や音が全くない完全な静けさ」を表す。
51と比較して、52は聞き手に対する要請を表す文であるため、 please("If it please you."「お差し支えありませんでしたら」にさかのぼる)をつけることで命令の語調が和らげられている。

53. 彼女は普通サイズ5の靴を履いている。
→ She usually takes (a) size 5 in shoes.

Take「選択的に所有空間に取り込む」イメージ(cf. 例文 44)。ここでは、サイズの選択肢が複数用意されている中で、自分の足に合うものを選んでいるところから。

54. 私たちは自らの行動に責任を持たなくてはならない。
→ We must take responsibility for our own actions.

選択的=考えて・自らの判断で所有空間に取り込むニュアンス。 Responsibilityを具体化・物象化して捉えている。

55. 彼はカッとなった(平静さを失った)。
→ He lost his temper.

He lost his wallet.「彼は財布をなくした」と比較検討せよ。もともと人間は temperを有しているものという前提に立っている。

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6. 所有 (HAVE)と存在 (BE)の表裏一体関係

"A has B"の構造が表す状況を裏から見ると、「BがAの所有空間の中に存在する」とも捉えられる場合がある。したがって、「〜が(は)…にある」という存在概念 (BE)を表す際、その「〜」の存在場所を「所有者」のように捉えることによって、所有概念 (HAVE)を用いた形でも英文が構成されうる。日本語の感覚からはこの "A has B"型の構成の仕方が発想しづらいのため、習熟していってもらいたい。

56. ベルリンには3つオペラハウスがある。(2通りに)
→ a. There are three opera houses in Berlin.
→ b. Berlin has three opera houses.

56aは「3つのオペラハウスがベルリンにある」という存在状況全体を新情報として提示するのに対し、56bでは three opera housesのみが新情報として焦点を当てられている。

57. この本は僕ので、君のではない。
→ This book is mine, not yours.

純粋な所有概念を表す際のデフォルトの構造は "A has B"型(動詞は haveの他に own, possess, holdなど)。一方で 57のように「所有者→所有物」という語順が逆転すると、文末に来る「所有者」の方がより強い情報価値を持つこととなり、典型的には対照 (mine, not yours)を表す文脈で見受けられる。

58. このコップには、ひび (crack)が入っている。(2通りに)
→ a. There is a crack in this cup.
→ b. This cup has a crack in it.

2文のニュアンスの違いは 56と同様。58bの方が、「ひび」という(この場合好ましくない)存在物そのものにより注目した言い方。また 58bの重要な注意点としては、 cupは crackを純粋に「所有」しているわけではなく、むしろ「ひび」はコップから独立して存在し得ない。このような場合、文尾に in itと補う要領を覚えておきたい。

59. 彼の部屋からは海がよく見える。(2通りに)
→ a. There is a good view of the sea from his room.
→ b. His room has a good view of the sea.

所有/存在概念が抽象的な対象にまで拡張されている例。また viewは「ある特定の場所から見える眺望・景色」として個別化して捉えられているため、不定冠詞の aがついている。

60. 長い沈黙が続いた。
→ There was a long silence.

Haveと beの転換は常に可能というわけではない。「沈黙」は、その場にいる人たちが(偶然)声を発しない間に生じるものであるため、存在概念の方面から捉えることはできるが、意図的に「所有」しておけるような対象とは考えにくく、したがって例えば *We had a long silence.といった言い方はできない。また、 silenceは「一定時間の沈黙」を個別化して a silenceと表すことは可能であるが、たとえ沈黙が断続的に2回起こったとしても、*(There were) two silences.とすることはできない。

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