行為概念


1. 行為概念: [行為者] → (行為) → [対象]

"[行為者] → (行為) → [対象]"が基本構造。ただし「行為」というもの自体が幅広い概念であるため、対象への影響度合いは動詞によって異なり、それに伴って文法性にも違いが生じてくる。

121. Tomはそのビスケットを半分に割った。
→ Tom broke the biscuit in half.

break: 対象に働きかけ、必ず "broken"という結果状態を伴う。121の場合 (broken) in halfが結果状態。

122. 彼はドアを押した。
→ He pushed the door.

push: 対象に力をかける意味を表すが、結果状態まで含意しない。122の場合も必ずしも「ドアが開いた」というわけではない。

123. Virginiaは New York's Sunの編集者に手紙を書いた。
→ Virginia wrote a letter to the editor of New York's Sun.

write: 上の break, pushが「もともと存在している対象」に対する行為を表すのに対し、 writeのような動詞(作成動詞)その行為の結果として対象が生じる (123の場合、 a letter)。

124. Church氏がその手紙を読んだ。
→ Mr Church read the letter.

read: 121~124と同じくSVOの構造をとる他動詞であるが、その「他動性」は低い。すなわち readとは行為者の頭の中で行われることであり、その行為をしたからといって対象そのものには何の影響も与えない。この事実は「対応する受動文が作れるか?」ということに関連し、"The letter was read by Mr Church."という文は、「手紙の内容が何らかの公共性を持って人々に影響した」という文脈でなければ意味をなさない。

125. この絵を見てください。
→ Look at this picture.

"look at 対象"や " listen to 対象"という行為は、 see, hearに比べれば意図的なものではあるが、対象への影響という観点から見れば readよりもさらにランクの低いものと考えられる。したがって [対象]はもはや「直接」目的語にならず、"動詞+前置詞+名詞(句)"の構造で表現されている。

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2. 行為概念 (2): 熊を撃ったらどうなった?

"[行為者] → (行為) → [対象]"という基本構造において、[対象]は名詞句(直接目的語)または前置詞句で表されうる。この違いは、行為者による行為が対象に対して与える影響の直接度に応じて生じてくるので、今回の例文を通して比較検討してみたい。

126. そのハンターは熊を撃った。(弾が熊に当たった)
→ The hunter shot the bear.

126では対象 the bearが shootという行為の直接目的語として表されており、ハンターの射撃行為から直接的に影響を受けている解釈となる。

127. そのハンターは熊を狙って撃った。(命中したとは限らない)
→ The hunter shot at the bear.

他方、127の at the bearは「一点」を表す前置詞 atに導かれた「場所概念」の拡張であり、そこに向けて shootという行為が行われた、ということを表しているに過ぎない。

128. 彼氏が騙してきたの。(自分に対し詐欺行為を働いた)
→ My boyfriend cheated me.

[対象]: meが直接目的語になっていることから、[行為者]である my boyfriendの行為の直接的な影響を受けている解釈。"cheat + [対象(人)]"は「詐欺などによって人を騙す」の意となる。

129. 彼氏が浮気したの。
→ My boyfriend cheated on me.

[対象]が前置詞句 on meで表されている 129では、cheatという行為の影響がより間接的であることが示される。この場合、[行為者] my boyfriendの不貞行為そのものは別な女性に向けられており、彼女である meへの影響は(当人にとっては重大であるにしても)副次的なものと捉えられる。

130. 警察はその殺人事件 (murder case)を検証した。
→ The police examined the murder case.

"examined the murdercase"と「V + O」の構造を取っていることから、徹底した賢明な捜査活動が想起される。

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3. 行為概念の拡張 → 無生物主語

行為概念の基本構造は "[行為者] → (行為) → [対象]"であり、最も典型的には人間の意図を持った行為が表現され、よって [行為者] = 人間がSとなる場合が多い。しかし英語では、人間以外も「行為」の原因として捉えられ、(ヨーロッパ言語の中でも特に)無生物主語が多用されるという特徴も同時に有している。

131. その看板には「芝生に立ち入り禁止 ("Keep off the grass")」と書いてあった。
→ The sign said "Keep off the grass."

もちろん人間がメッセージを看板に書いたわけだが、看板を見ている人にとってはその行為者は不明なため背景化され、代わりに看板そのもの: the signがメッセージの伝達者(行為者)として捉えられている。

132. この道を行けば駅に出ます。
→ This road will take you to the station.

日本語から発想しづらい英文例の一つだが、これに習熟すれば "If you follow this road, you will get to the station."と言うよりもシンプルに表現できる。

133. そのストライキによって鉄道システムが停止した (closed down)。
→ The strike closed down the railway system.

人間の行為である strikeが具象化され抽象名詞となり、「不便さ」を引き起こす原因として Sに立てられている。

134. Kartina(ハリケーンの名称)は New Orleansに甚大な被害をもたらした (devastated)。
→ Katrina devastated New Orleans.

ハリケーンや地震、洪水といった自然現象が具象化され、人間社会に影響(被害)を及ぼす [行為者]の一種として捉えられている。ハリケーン被害の多いアメリカでは、人名がつけられることによって「擬人化」されている点にも注目。

135. お金では幸せは買えない。
→ Money cannot buy happiness.

「人間がお金を使って品物を買う」という行為を出発点に、135では一般論として「人間」が背景化され、「お金」に焦点を当てた言い方ができる。

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4. 行為概念の拡張 (2) → SVOの構造を取る動詞の諸相

他動詞を用いた SVOの構造は、「典型的には」今まで見てきたように "[行為者] → (行為) → [対象]"と結びつく。しかし、「[行為者]の(意図的な)行為が[対象]に影響を与える」という状況以外でも SVOの文構造を持つことは可能である。今回はそのような例を検討していこう。

136. 彼はフランス語をとても上手に話す。
→ He speaks French very well.

speak: 話者がある言語を話すからといって言語に対して影響を与えるわけではないが、もともと speakはことばを発することに重点を置いた動詞で (cf. speak a word)、行為の結果としてことばが生じるものとして捉えられている。

137. 良いレストランを知ってるんだ。
→ I know a good restaurant.

know: Sで示される人が Oで示される知識・情報を頭の中に保持している状態を表し、一種の所有概念とも分析できるかもしれない。ただし、直接目的語を取るか前置詞句を従えるかという点においては、今まで見てきた行為概念における「直接性」の観点で似たような振る舞いを見せる。

138. 子供は好きですか?
→ Do you like children?

like: "[(感情の)経験者] LIKE [原因-対象]"という概念を表す。一般的な好みを述べる場合、Oに可算名詞が来る時は複数形。

139. 私たちは Matterhornに登った。
→ We climbed the Matterhorn.

climb: "[移動主体-行為者] GO UP [場所-対象]"といった概念を言語化。Oになる名詞が示すものは、やはり行為の影響を受ける対象として解釈され、例えば 139の場合では、 the Matterhornを「登頂」したという意味を含意する。(Cf. "climb on a mountain"では「登頂」の含意は持たない。)

140. この鍵でドアを開けることができるでしょう。
→ This key will open the door.

"[行為者]→[身体の一部]→[道具]→[対象]"と行為の影響が向かう中で、140のように [行為者(および身体)]を背景化し、"[道具]→[対象]"に注目して英文を作ることもできる。「ドアを開く」という場合、ドア開閉用の道具は Sになれるが、それ以外は不可: *The hummer opened the door. また、風などの自然の力も Sになれる: A gust of wind opened the door.「一陣の風でドアが開いた。」(参照:『ユースプログレッシブ英和辞典』)

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5. 行為概念 → doの用法

Doのコア概念は「対象に何らかの行為をする」ということで、今回は (1)行為そのものに注目する用法と (2)対象を示し「何をする」かは常識・状況に応じて解釈する例を研究して行く。

141. 今夜は何をするつもり?
→ What are you going to do tonight?

do: 「対象に何らかの行為をする」という漠然とした行為を表し、具体的な行為の内容を指定することが不要または不可能である際に用いられる。Wh-疑問文の 141では、相手が何をするのかは話し手にとって未知の情報であるため、行為内容の指定が不可能である例といえる。

142. そこで突っ立っているんじゃない。何かしろ。
→ Don't just stand there. Do something.

Doはほぼあらゆる行為に言及でき、142で話し手が想定している行為の選択肢は、 clean your room, carry the box, hold the door (against the wind), スポーツの試合中ならば mark your manなど、状況に応じて多様な意味を表しうる。

143. 不可能なことをするのは楽しいものだ。(Walt Disney)
→ It's kind of fun to do the impossible.

仮主語に Itを立て、to do以下の真主語を最後に据える文型。the impossibleは「性質」に言及することによって「その性質を持つ物事 ( impossible things)」を表すメトニミー。143も「行為そのもの」に注目する doの用法の一例。

144. 私が皿洗いをするよ。
→ I'll do the dishes.

冒頭に示した「(2)対象を示し『何をする』かは常識・状況に応じて解釈する例」。皿: the dishesに対して行う典型的な行為として、wash the dishesの意味が想定されている。ただし、 washが「洗う」という局面に注目するのに対し、do the dishesは「皿洗いの一連の動作」を指す。

145. 私の代わりに(ために)お使いに行ってきてくれない?
→ Could you do the shopping for me?

行為を表す名詞 (the shopping, the cleaning, some readingなど)を Oに取り「する内容」を示す。ふつう do the shopping「日用品(食料など)を買いに行くこと」go shopping「気晴らしに(洋服などの)ショッピングに行くこと」を意味する。

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6. 行為概念 → doの用法 (2)

146. 週1回エアロビクス (aerobics)をしています。
→ I do aerobics once a week.

スポーツに関して「〜する」にあたる動詞には主に playと doがある。 Play「ゲーム・遊び的要素の強い、主にボールを使う競技」に、 do「主に体を鍛えるための個人競技」に用いられる。

147. 我々はいくつかのイタリアの会社と取引をしています。
→ We do business with a number of Italian companies.

「(ある行為)をする」というときの doの例。主に身体を動かす行為を表す時に用いる: do a course「科目を取る」, do some repairs「修理する」, do some knitting「編み物をする」

148. A: いつがご都合よろしい (convenient)ですか?ー B: 週末ならいつでも結構です。
→ A: When is it convenient for you? ー B: Any weekend will do.

通常 will, shouldを伴い「(物事が)〜の必要を満たす・間に合う・役に立つ・適当である」という意味を表す。

149. A: 車をどけてください。ー B: もう動かしましたよ。
→ A: Put the car away, please. ー B: I've already done so.

do so: 先行の動詞句の繰り返しを避けるために用いられる。 do soの場合、先行文脈と同じ主語による同一の行為を指す。

150. A: Moroccoでラクダ (camel)に乗ったんだ。ー B: 僕も乗ってみたいな。
→ A: I rode a camel in Morocco. ー B: I'd love to do that.

do {it/that}: 繰り返しを避けるはたらきは do soと同じだが、先行文脈と主語が異なる場合はこちらが好まれる。

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